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ネマリンミオパチー

先天性ミオパチーの中で最も頻度が高い病気です。ネマリンミオパチーだけで10種類の遺伝子の異常がみつかっています。次の世代への遺伝はありません。筋組織をGomoriトリクローム変法染色でみると、糸くず(ギリシャ語でnemaといいます)のような封入体をみることから、この病名がつけられました。

 原因 
この封入体(ネマリン小体)は電子顕微鏡でみると、横紋筋の横じまの一番濃いZ線と同じ濃さをしています。また、ネマリン小体は生化学的にもZ線が持つαアクチニン蛋白を持っています。どうして、この病気ではZ線蛋白が過剰に作られるのか、分かっていません。さらに驚くべきことに、ネマリン小体の量と病気の重症度の間には全く関係がないです。

いままで分かっている遺伝子の変異は筋線維が収縮・弛緩するときに関係がある構造蛋白(トロポミオシン、アクチン、ネブリンなど)や筋細胞の発育分化を誘導する遺伝子です。その中で一番多いのは、アクチンフィラメントに関係するACTA1遺伝子に変異がみられるものです。ネマリンミオパチーの約30-40%はこの遺伝子に変異があります。 とくに、重症乳児型の半数以上はこの遺伝子の変異があると言われています。常染色体劣性と優性遺伝があります。

ネマリンミオパチーの病理:正常筋(左)とネマリンミオパチー(右)の生検筋のGomoriトリクローム変法染色(筋疾患の診断には最も大切な染色。簡単で30分以内に結果が出る)。本症では筋線維内に赤黒色に染まる糸状ないし顆粒状の物質を多く認め、それが診断的意義をもつ。

セントラルコア病

主に常染色体優性遺伝をとると考えられています。その遺伝子座は第19染色体にあって、リアノヂン受容体遺伝子に変異がみられています。筋線維の中心部に筋小胞体やミトコンドリアがなく酸化酵素染色(NADH-TRなど)で中央部が果物の芯をみるように染色されないのが特徴とされています。

セントラルコア病の病理:ほとんど全ての線維が、濃染するタイプ1線維で、筋線維の中心に酵素活性が無く果物の芯(コア)のように見える。

セントラルコア病の病理:左の正常な骨格筋を NADH-TR染色すると濃く染まるタイプ1線維と タイプ2線維がモザイクをなしてみられる。

ミオチュブラーミオパチー

比較的良性の経過をとる常染色体優性(劣性もある)と、乳児期から重篤な症状をとるX連鎖劣性遺伝をとるものが知られています。筋発生途上にある筋管細胞(myotube)に構造が似ているのでこの病名がつけられました。この病気では筋細胞の中心に核あるので、中心核病(centronuclear myopathy)と呼ばれることもあります。

 原因 
乳児重症型では、X連鎖劣性遺伝をとるものが大半で、遺伝子はクローニングされていて、責任蛋白は「ミオチューブラリン」と名付けられています。この蛋白はtyrosine phosphataseに属しますが、この酵素(蛋白?)が欠損すると、なぜ筋の未熟性がくるのか、よく分かっていません。

 症状 
乳児重症型では、筋線維は胎児の筋肉のように未熟のままです。

先天性筋線維タイプ不均等症

筋線維内の異常な封入体や構造異常がなく、タイプ1(赤筋)線維がタイプ2(白筋)線維より12%以上の差をもって小径である場合の診断名です。乳児期から筋緊張低下、筋力低下があり、発達が遅れています。

 原因 
いずれの疾患でも共通して、重要な病理学的所見は、タイプ1線維がタイプ2線維より小径で、タイプ1線維の数が正常上限の55%以上を占める(タイプ1線維優位:type 1 fiber predominance)ことです。さらに、筋線維径は全体に細く、未熟で未分化なものが多く存在します。筋線維タイプ分布の異常と未熟性が、筋力・筋緊張低下の原因と考えられています。