先天性ミオパチー

「先天性」は生下時ないし、しばらくして何らかの症状が出現すること、「ミオパチー」は筋肉の病気の意味を指します。乳幼児期早期からの筋力、筋緊張低下があり、多くは歩行を獲得しますが、以後も筋力低下が持続する疾患です。進行性がなく、予後良好であると考えられ、以前の教科書には先天性非進行性ミオパチーと「非進行性」の言葉がつけられていました。しかし、多くの患者さんを長期にフォローすると緩徐ですが進行性のものが多く、また呼吸不全に陥りやすいなどから「非進行性」の言葉が今は取り除かれています。

先天性ミオパチーには数多くの種類があります

ネマリンミオパチーやセントラルコア病、ミオチュブラーミオパチーなどの病気に分類されています。遺伝子異常が数多く見つかっていて、筋組織も異なります。すべて、筋肉を顕微鏡でみた(病理学的)特徴で名前がつけられています。いろいろと名前がありますが、臨床症状はほぼ同じです。逆にいうと、臨床症状からは先天性ミオパチーの診断はできますが、その先の分類までの診断は難しいです。例えば、ネマリンミオパチーやセントラルコア病は病理学的には互いに明らかに所見が異なり、また遺伝子座も異なっているのに、臨床症状はきわめてよく似ています。また、ネマリンミオパチーの患者さんと先天性筋線維タイプ不均等症の患者さんを診てもよく似ています。そのため、臨床的には鑑別が困難です。

正確な診断名が必要

呼吸筋が侵されたり、関節の拘縮(側彎も含む)が見られるようになったり、合併症を伴うことが多いです。病気によって症状が違うので、正確な診断名が必要です。なかにはポンペ病のように治療でよくなる病気があります。心臓が早くから侵される病気もあれば、心臓は一生侵されない病気もあります。一方、呼吸器が強く侵される病気も多くあります。病気によって何を中心にしてリハビリをしたり、定期的な検査をしたり、などフォローのプログラムを組むのに、正しい診断が必要です。

確定診断する

筋のCTやMRI検査をして、筋生検を行い、遺伝子解析をする必要があります。

症状

先天性ミオパチーはどの病気でも、乳児重症型、良性先天型、成人発症型の3型に分けられています。顔面筋の筋力低下で、細長い顔をして表情の乏しい患者さんが多いです。口の周りの筋力も弱いので、口を開けていたり、ストローで水を飲みにくかったりも症状としてあります。

 重症先天型 
新生児期から呼吸筋が弱く、哺乳力も弱いのは重症乳児型と呼ばれています。手足の動きもほとんどなく、顔の表情はほとんどありません。また体が軟らかく、抱いてもぐにゃぐにゃして、安定感がありません。人工呼吸器、経管栄養が必要です。症状は成長とともに改善する患者さんもいますが、座位獲得までは望めないことが多いです。

 良性先天型 
先天性ミオパチーの中で最も多いタイプです、多くは発達の遅れで気づかれます。とくに首の座りが遅れることが多いです。歩き始めも遅く2~3歳が多く、歩行開始後も筋力低下は続き、転びやすい、階段の昇降に手すりがいるなどの症状があります。呼吸筋が弱く早期から非侵襲的人工呼吸器(NIV)を必要とする患者さんがいるため、呼吸管理はとても大切です。心臓は侵されにくいです。少しずつ進行する患者さんが多いですが、なかにはどんどんよくなる患者さんもいます。

 成人型 
小児期から筋力低下があってもきわめて軽く、自分では運動神経が鈍いくらいしか考えてなくて、成人になって突然、肺炎になり、先天性ミオパチーが見つかる患者さんがいます。このような人は先天性ミオパチー成人発症型と呼んでいます。原因が全く分からず、でも組織学的にはネマリンミオパチーの組織を見る患者さんもいます。治療法も確立していません。

制度

先天性ミオパチーは国の指定難病に認定されていて、医療費の援助を受けることができます。小児慢性特定疾患にも認定されています。他にも受けることができる制度があります。詳しくは役場の福祉課にお尋ねください。

協力:国立精神・神経医療研究センター病院
名誉院長 埜中 征哉 先生